永瑠は頷くと、そのまま上を向いて黙り込んだ。
会話が途切れると、森の中や草の間から、夏の虫の鳴き声がよく聞こえる。
永瑠が見上げた夜空にも、街中じゃ見えないほどの星が瞬いているのだろうと思う。
こういう時間も悪くないと、らしくないことさえ思った。
「……あのさ」
不意に、虫の声を遮って、永瑠が静かに語りかけてきた。
顔を上げた俺に、相変わらず上を向いたまま永瑠は続ける。
「オレは別に、楽しいことをするのは嫌いじゃない。こうやってキャンプをするのも、ホントは嫌いじゃない」
「……うん」
「でも作り笑いをしてまで楽しもうとも思わない。そんなの楽しくなんかない」
「……だな」
「オレは普通じゃないから、受け入れてなんてもらえないし、だからって受け入れてもらえるように自分がムリするのも、違うと思う」
「……うん」
「けど、オレは別に、自分のことを“オレ”って呼ぶのを、好きでやってるわけじゃない」
「……そっか」
「うん。でもそれを直したからって、オレはあの面倒な集団の中で過ごすのは嫌だ」
「……うん」
「……なあ、有架」
「ん?」
「友達ってさ、どうやって作ればいい?」
「…………」
「わかんないんだよね、オレ。1人に慣れ過ぎて」
虫の鳴き声が、止んだ。


