消灯時間になるまで、あっという間だった気がする。

結構ハードなスケジュールになっていて、保護者側も早々のんびりしていられなかったのは間違いない。

消灯時間には、他の保護者に比べて若いと言え、さすがの俺もくたくただった。

けれど生徒が眠っているはずのテントの中は、いまだ明かりがついていて、笑い声が絶えず響いていた。

食事をとる用のテーブルに各々で座っていた保護者たちも、横で火を焚いたまま談笑している。

俺は話す相手も居ないので、その場を離れ、昼間の木陰で1人、携帯をいじっていた。


「……にしても、電波悪ィよな、やっぱ」


電波を示す3本のアンテナは、1つになったり2つになったり、圏外になったりと忙しい。

携帯を振ってみるけど、まあ無意味なのはわかっている。

諦めて携帯をポケットに入れ、保護者用のテントへ向かおうとする。

と。

生徒用のテントから少し離れた切り株に、ちっこい人影を見つけた。

俺はその見慣れた人影に近づき、あえて背後から、


「なーがーるーちゃーん」

「ひぎゃああっっ!?」


……声をかけてみた、んだけど。

なんデスかその叫び声は。

焦りと恐怖の入り混じったなんとも言えない表情でこちらを振り返った永瑠は、俺を見上げたと同時にキッと睨んできた。


「お前かよ!」

「うん」

「ビビったじゃねェか!いきなり背後から話しかけんなバカ!」

「へえ。そんなこと言うんだ」

「は!?なに!?」