再び見上げる形になって、目を細める俺は、ふと聞きたくなって、
「なあ」
「なに?」
「……お前等って、作り笑いしないと友達できねェの?」
我ながら嫌味な聞き方だとも思ったけど、でもさっきの女子生徒の会話を聞いていて、そう尋ねずには居られなかった。
けれど永瑠は嫌な顔ひとつせず、むしろ呆れたように頷いた。
「そうかも」
「……そっか」
「うん。面倒すぎて反吐が出る」
スッと、一瞬だけ表情を曇らせた……ように見えた永瑠は、グッと伸びをしてから「だあー」と気だるそうな声を発した。
「あーあ!男子はいいよなー楽そうでー」
「……まあ、全員がそうじゃないかもだけど、俺は楽だった」
「あんな友達が居るくらいだしな」
「……たしかに」
朝の袮夏を思い出して苦笑いしつつ、俺も立ち上がる。
それから、今度は俺が見下ろす形になった永瑠の後ろ頭を軽く叩く。
「行くぞ」
「え、お前も行くのかよ」
「悪い?」
「……悪くないけど」
叩かれた部分を擦りながら、口をとがらせてそう答える永瑠は、俺の知ってる永瑠で。
俺はその不機嫌そうな横顔を見下ろし、密かに安堵の笑みを浮かべた。


