できれば質問をするのか談笑するのかどっちかにしてほしい。
俺はどうすればいいんだろうか。
質問に答えた方がいいのか、会話に相槌打ったらいいのかどうなのか。
と、ずっと苦笑を浮かべていた俺の視界に、オリエンテーションが終了したらしい生徒の集団が映り込んだ。
奥様方の会話に耳を傾けつつ、永瑠はどこだろうと集団の方へ視線を向ける。
眼鏡のショートカットはどこだーっと。
あ、発見。
……って、ん?
「あら、また永瑠ちゃん……」
「まあ、あの子も難しいみたいだし……」
耳を傾けていた会話に、俺は見たこともないような風景に戸惑いつつも尋ねる。
「あの、永瑠って、いっつもあんな感じなんですか?」
「あなた永瑠ちゃんのお知り合いだったの?」
「あぁ、まあ、一応兄貴みたいな感じで」
「そう……。そうね~、あの子、いっつもあんな感じなのよ」
「いつも1人で居るのよね」
その言葉に、もう一度永瑠へと目を向ける。
集団の、後ろの方。
少し離れたそこを、永瑠は1人、集団についていく。
“友達居ないだろ”なんて言ったけど、まさかあそこまで孤立してるとも思わなかった。
周りには、同い年の女の子が楽しそうに会話をしている光景があるのに、永瑠は1人でどこかを見つめている。
遠い空か、はたまた雲か、あるいはどこでもない、“何処か”、か。
永瑠がどこを、何を見ているかはわからない。
ただひとつわかることと言えば。
……あれは俺の知ってる永瑠じゃない、って、ことだけ。


