まあそれはともかく、このまま永瑠を怒らせておくのも、年上としてちょっとどうかと思うので。
「はいはい、冗談だから。……ほらよ」
言いながら、俺は自分のポケットからとある物を取り出す。
それを永瑠に差し出すと、ヤツはそれを見つめて、次いで俺を見上げる。
「……なんだよ、これ」
「見てわかるだろ。ロリーポップだよ」
「なんで今ここでこれをオレに渡すんだよ」
眉根を寄せる永瑠に、俺はニッと笑って見せて。
「だって、お前これ、好きだろ」
「食いもんで機嫌とろうとか思ってんなよ!」
「ふぅん。じゃ、いらないって?」
「や、別に嫌いじゃないからもらっとく。もらっといてやる!」
「素直じゃねェなー……はいよ」
何故か上から目線になりたがる永瑠にロリーポップ――棒付きキャンディーを渡す。
永瑠はそれを手に握ったまま、こちらを見たり見なかったり。
……わかりやすいっちゃ、わかりやすいよな、コイツ。
俺が永瑠に背を向ける――フリをして横目で確認――と、永瑠は咄嗟にそのロリーポップを口に入れた。
それに気づかぬフリをして、俺はリビングへと向かう。
「え、有架兄ちゃん、僕にはないの!?」
追ってくる英璃の言葉に、
「残念ながら、ロリーポップは永瑠限定」
俺はそう答えながら、リビングのドアを開けた。


