……っつか、なんでそんなに怒ってるのか。
寝癖のついた格好で出てきたのは永瑠自身だし、別に俺とかあのバカに見られても問題はないような気がするんだけど。
って、それは俺の感覚であって、永瑠の感覚とは違うって話か。
とは思うものの。
「…………」
ここまで不機嫌になられると、どうしていいかわからないわけで。
……とりあえず。
「……永瑠」
車が信号に引っかかったと同時に、助手席に座る不機嫌ちゃんの名前を呼んでみる。
すると、その不機嫌ちゃん永瑠は、変わらずムスッとした表情でこちらを向いた。
「……なんだよ」
あ、意外にも返事来たよ。
俺はちょっと安堵して、ハンドルに腕を乗せて寄り掛かる。
「いつまで怒ってんの」
「知らねェ」
「ずっとその顔だと可愛くないデスよ」
「別に可愛くなくて結構だし!」
キッとこちらを睨んで言い返してくる永瑠に、やっぱどう考えても俺嫌われてるよなと苦笑。
嫌いなヤツに宥められても意味ないよなと、俺は苦笑を浮かべたままポケットに手を入れ、例の秘密兵器を取り出す。
それを、永瑠の頭にコツンと当てた。


