あの調子だと、たぶん永瑠はかなり不機嫌な状態で出てくると思う。
それは困る。
キャンプ場へは各々で行かなければならないらしく、だから車を使うしかないわけで。
つまり、車内では永瑠と2人になるって話。
……ずっと不機嫌顔でそっぽ向かれてても気まずい、ので。
「……アレ持ってくか」
俺がため息交じりにそうつぶやくと、みぞおちを擦っていた袮夏が「ぬ?」と。
「“アレ”ってなんや?」
「秘密兵器」
「なにそれかっこいい!」
ゲームバカ(またの名をゲーオタ)の袮夏が目を輝かせ始めたので、俺は苦笑を浮かべながら、答えた。
「まあ、味は甘いんだけどさ」
*****
予想的中。
「…………」
「…………」
案の定、車(オデッセイ)の中はかなりの静寂に包まれていた。
ハンドルを握る俺の隣、助手席に座っている永瑠はムスッとした顔を窓の外へと向けたまま、一向に口を開こうとはしない。


