……いや、むしろショックすぎておかしくなった、とか?
心の中だけで首を捻っている俺に、永瑠はいつも通りのちょっと不機嫌みたいな顔を向け、
「っていうか有架、さっさと用意しねェと間に合わねーぞ!」
と、これもまたいつも通りの強気口調で言う。
ちょっとムカついた。
「……寝癖つけてるお前に言われたくねェ」
「え、うそ!?」
やっぱり気づいていなかったらしい。
言われて初めて寝起きだということを思いだしたらしい永瑠は、脊髄反射のように素早い動きで自分の頭を押さえ、何度も髪の毛を撫でつけている。
まったく意味をなしてないけど。
「な、なんでもっと早く教えてくんないんだよばかあ!」
「永瑠、そういうのなんていうか知ってる?」
「なんだよ!」
「責任転嫁」
「死ねよバーカっ!」
吐き捨てるようにそう叫んだ永瑠は、自分の住む部屋の玄関を勢いよく開け、逃げるように飛び込んでいった。
アイツ絶対“バカ”って口癖だろ。
「……なんやオモロイ子やなあ、永瑠ちゃん」
静かになった廊下に、さっきまで黙っていた袮夏の声が響く。
「“死ねよバーカ”とか叫ぶ子初めて見たわあ。しかも有架(笑)に!」
「俺の名前部分だけ笑ってんじゃねェ」
「ぐふっ」
背後に居たエセ以下略のみぞおちに軽く肘鉄を喰らわせつつ、俺はこの後どうしようかと考える。


