あまりにもさらっとすぎて危うく聞き流すところだった。
言われた本人である永瑠は、笑っているのか驚いているのかよくわからない中途半端な笑みを浮かべている。
けど、言った本人である袮夏は、永瑠の表情の変化にまったく気が付いていないようで。
「それにしても永瑠くん背低いなあ。何歳なん?」
「え、えっと……」
「声も高いやんなあ。声変わりまだやねんな?ほんなら小学生くらい?」
「あ、あの……」
「そろそろ気づけよ。むしろ気付いてやれよバカ」
もはやどこから突っ込んでいいのかわからない俺は、左手で自分の頭を押さえつつ、右手で袮夏(もといバカ)の肩を掴んだ。
ヤツはホントの本気で意味が分からないらしく、きょとんとしてこちらを振り向く。
「え、なに?なんに気づけと?」
「“永瑠くん”じゃなくて“永瑠ちゃん”」
「どういうことやねん」
「そういうことだよ」
バッと風を切る音を立て、袮夏が永瑠へと顔を向ける。
永瑠がビクッと身を引くのが見て取れた。
袮夏は身をかがめ、冷や汗をかき始めている永瑠の顔をまじまじと見つめ、一言。
「……もしや今流行りの“男の娘”ってヤツ……?」
がすんっ
「……袮夏。お前の視力なんだっけ」
「ぐぁっはっ……に、2.0っす……!世界が鮮明に見える目やで!」
「お前が持ってるともったいねェから寄付してこい」
「なにそれこわい」


