喚きながら懸命にドアを掴んで引っ張るエセ関西人。
全力で通報したい。
あーもうホントなんでコイツに頼んだんだろう俺。
約2年会ってなかったから、高校時代をどんだけこのバカにめちゃくちゃにされたかってこと忘れてた。
とりあえず3年間人並みに過ごせりゃ俺はそれでよかったんだけど、コイツと出会ってしまったがために騒がしすぎる高校時代を過ごす羽目になってしまったわけで。
教師から目をつけられるわ他校から喧嘩売られるわ警察に追いかけ回されるわ、とにかく高校時代は死に物狂いで生きてた気がする。
……まあ、“楽しかったか”と聞かれたら、迷わず“楽しすぎた”って答えるけど。
答える、けど。
「……いい加減手離せ」
「だが断る!」
……このバカはどうすりゃいいの。
「なんなんだよお前は」
「2年振りの再会がこの冷たさとか俺は認めへん!」
「残念ながらお前に対する温かさとか持ち合わせてないんで」
「このドライアイス!もっとこう、全体的に心を広く温かくやな!?」
「……袮夏(ちなつ)」
「なんや!」
「お前は圏外」
「鬱だ死のう」
頭を抱えたエセ関西人、もとい袮夏に、俺はようやく閉められる状態になったドアを、今度こそ閉めようとドアノブを引く。
が、同時にガチャリと、お隣の玄関が開いた。
思わずドアを閉めるのを中断し、そちらを見ると、見慣れた顔が覗いていた。


