「ホンマお前、俺がおらんかったらどないするつもりやってん」
「…………」
「よかったなあ、俺という優しい友を持って!」
「…………」
「はいよ、これが頼まれてた品物やで!」
「帰れエセ関西人」
「相変わらずのドライアイス!」
早朝、まだ日も昇り切っていないマンションの上階、俺の住む部屋の玄関先。
久しぶりに見た懐かしいバカ面に、心の底からため息が出た。
“キャンプ明日だった”と永瑠から告げられ、まず迷ったのが荷物を入れるバッグ。
キャンプは1泊2日らしいので、こっちに帰ってくるために使った大きめのボストンバッグを持っていくのはどうにも気が引けたわけだ。
だから小さめのバッグを誰かから借りるしかないなと思った俺は、こっちに帰ってきているダチが居たら貸してもらおうと考えて。
最初に電話してみた高校の時のダチが帰ってきてると言うので、頼んでみた、ら。
「いやー、ホンマ変わってへんなお前!」
「お前も相変わらず変な関西弁だな」
「変ってなんやねん!個性や!」
「存在自体が個性的すぎるからその辺にしとけ」
「え、なんそれ、褒めてんねや?いやー、照れるわー!」
「そのまま朽ちろ」
ヤツの言葉に一言だけ返し、俺はその手に持たれていたバッグを受け取り(もとい引ったくり)、玄関のドアを閉めようと試みる。
まあドアは閉まらなかったんだけど。
「ちょちょちょっちょまっ、有架ってばしばらく会わん内に更に冷とうなってるやん!どうしよう俺凍ってまう!」
「ウチの玄関先で凍られると困るのでとりあえず帰って凍って下さい」
「なにそれひどい!」