振り返って、見下ろした先に居たのは、ショートカットで眼鏡でモノクロのTシャツとジーンズ姿の……
……まあなんつーか、女子であることの欠片もない格好をした永瑠で。
容姿がまるで性別不明な感じなので、永瑠はよく男子に間違われている。
名前も男っぽいし、女子っぽい格好とかすりゃいいのに。
なにゆえコイツが男装の如しモノクロジーンズな出で立ちでいるのか、俺にはさっぱり意味不明。
そんな永瑠の身長は、143と超低め。
身長175ちょいくらいの俺が単に振り返っただけじゃ誰も居ないのと同然な身長差である。
なので、腰を屈めないといけないワケで。
「なんで蹴るんだよ」
「邪魔だ退け。そしてしゃがむな、ムカつくから」
「しゃがまねェとお前の声が俺の耳まで届かないんデス」
「おい、英璃、金づち持ってこい。コイツの足をだるま落とし風にブッ飛ばすから」
「……姉ちゃん。殺人、ダメ。絶対」
大人な対応をする英璃とは正反対に、永瑠はキッと俺を見上げ。
「別にお前にオレの声が聞こえなくても結構だし!聞いて欲しい話もねェし!」
……あー、これも言ってなかった。
永瑠は女子だけど、自分のことを“オレ”と呼ぶちょっと変わった……いや、かなり変わったヤツなのだ。
なんでかって言うのは、まあ例の如く俺にはわからない。


