「……そういえば」
俺はこの少し暗く気まずいような雰囲気をかき消すために、話題を変えようと口を開く。
今度は下を向いていた永瑠が“なんだよ”と言いたそうな色を目に浮かべて、顔を上げた。
“なんだよ”じゃなくて、さ。
「さっき、なんて言おうとしたの」
「さっき……?あっ!」
どうやらさっきまで俺に言おうと頑張っていた話を綺麗に忘れていたようで、永瑠は我に返ったような声を上げた。
あんなに頑張ってあれだけ言うのを引っ張ってたクセに、忘れてるってどうなんだ。
じゃあそれほど大事な話でもないんじゃねェのとか思ってしまう俺なんだ、けど。
「え、えーっと……」
再び目を泳がせ、言葉に詰まりだした永瑠を見たら、大事な話じゃないってことでもないんじゃないかと思い直してみたりする。
それならちゃんと聞こうと思い、俺は何も言わずに、せわしなく目を泳がせている永瑠を見つめた。
けど、永瑠は。
「だ、だから黙るなってばー!」
とか怒り出すわけで。
俺は少なからず呆れ顔を浮かべてしまう。
「……あー、はいはい、じゃあ喋る。で、言いたいことってなに?」
「い、今から言う!言うから待て!」
もう十分待った気がするんだけど、なんて、まあ言わないけどさ。


