視線を下ろしてみると、眉間にしわを寄せた永瑠が、やっぱり俺を睨んでいる姿があって。
ホントなんでこんなに睨まれなければならないのかわからない。
2年振りに会って早々、3回以上は鋭い目を向けられている気がしてならないんデスけど。
俺嫌われてんのかな、とか思いながら、名前を呼んできたくせにその後は黙ってこちらを睨むばかりの永瑠に“なに?”という意思を伝えるように少し首をかたむけてみせる。
すると、永瑠は鋭く尖らせていた視線をスッと下ろし、
「……やっぱ、わかんないよな」
そう、つぶやいた気がした。
「……なにが?」
気になって尋ねてみたけど、永瑠は首を横に振るだけで。
「や、なんでもない」
「なんでもないって顔じゃねェけど」
「気のせいだろ!」
「…………」
「っていうか気のせいだから!」
俺は何も言ってないのにムキになる永瑠は逆に怪しい。
むしろ“聞いてくれ”って言っているようなものだ。
でもここで聞き返さなかったのは、
「……なんでもないから」
ずっと下を向いた状態で、永瑠の小さな声がそう言ったから。
本当に聞かないでほしいと、うつむいた永瑠の姿が告げているように思えて、だから俺は「わかったよ」とだけ返した。
気にならないと言ったら、嘘になるけど。


