俺は何も言わずに、ただ永瑠の話を聞く。
それがわかっているのか、永瑠は続ける。
「全然嫌味がないっていうか、心が綺麗っていうか……純粋に、“よろしくね”って、言われちゃった」
「…………」
「そしたらまた泣けてきちゃって、そして昨日の事態に陥ったわけで……」
永瑠は少しばかり、申し訳なさそうに言う。
……あぁ、だからあの場所に七瀬が居たのか。
さっきよりも顔を上げ、永瑠はため息をつく。
かと思えば、
「こんな素敵な人に勝てるわけねェ!」
と、声を上げた。
ベンチの傍に居た鳩が数羽、夏空へ飛んで行った。
「……って、思いました」
「…………っ」
「でも“よろしくね”って言われちゃったら、わたしに選択肢なんてないわけで」
「…………」
「諦めようと思ってたのに」
「…………」
「だから不機嫌なのデス」
言い切って、永瑠は不機嫌顔で俺を見た。


