ロリーポップが不機嫌なワケ。





「久しぶりね、有架くん」


そう言ってリビングに入ってきたその人は、永瑠と英璃の母親である未花子(みかこ)さん。

見た瞬間、少し驚いた。

2年前よりも細くなっている気がしたから。

もともと色白で細い人だったけど、それに拍車がかかっているように思えてしかたない。

それも、家族が一人減ってから、だ。


「……お久しぶりです」


俺が軽く頭を下げながら言うと、未花子さんは微笑を浮かべたままソファへと足を向ける。

ゆっくりと向かいのソファに腰掛けながら、未花子さんはこちらに視線をよこす。


「2年くらい帰ってこなかったでしょう」

「まあ……」

「お母さんにもあんまり連絡してなかったみたいだし」


さすが長年仲のいいお隣同士、そういう情報は筒抜けらしい。

思わず苦笑。


「あはは、すみません」

「ちゃんと連絡入れたり、顔見せに帰って来なきゃダメよ」

「そうですね」

「家族は大切にしなきゃね」


“ひとつしかないんだから”


そう言って、ニコリと笑った未花子さん。

その笑みに、一瞬、なんとなく違和感を覚えた、気がした。