ワケを問う。
永瑠はしばらくもごもごした後、諦めたように視線を足元へ落とした。
「……昨日」
「ん?」
「昨日の朝、七瀬さん、ウチに来たんだ」
「…………っ」
まさかここで七瀬の名前が出てくるとは思わず。
俺は一瞬、呼吸を止めてしまった。
けれど次の永瑠の言葉は、
「……“有架のこと、よろしくね”って、言われた」
呼吸どころか心臓も止めそうなほどだった。
……おいこら、七瀬。
なんてこと言ってくれてんだ。
泣かせる気か。
誰が泣くか。
もう泣かねーよバカ。
そんな思いを込めて、ロリーポップを噛んだ。
カリッと、欠ける音がした。
その音が消えた後、永瑠は静かな声で言う。
「……すごく、素敵な人だね」


