ロリーポップが不機嫌なワケ。





「……ってわけで、これ、わたしを救ってくれたお返し」


永瑠は、「はい」と手に持ったロリーポップを揺らす。

俺はそのお返しを受け取った。


「……どーも」

「いえいえ。まだ返し足りないから、これから返すね」

「……りょーかい」

「だから、その、げ、元気、出してね」

「……あぁ」


励ますことに慣れていないんだろう。

永瑠は戸惑いがちに、そう言った。

噛みまくりの言葉が、逆に永瑠らしくて、なんだか笑えた。

少し笑って、受け取ったロリーポップを見つめる。

再び前を向いた永瑠は、微かに深呼吸をした。


「……また、辛くなったら、戻ってくればいいよ」


永瑠の声は、少し緊張したように、けれど静かで和やかだ。

蝉の鳴き声をすり抜けて、しっかりと届いてくる。


「きっとみんな、そうやって進むんだよ。ちょっと振り返って、ちょっと戻って、でもまた一歩進むの。たぶん、きっとそうだから」

「…………」

「だからもし、泣きたくなったら、またここに、この街に戻ってくればいい」

「……あぁ」

「有架のお母さんとかお父さんとか居るし、ウチの家族も居るし、友達も居るし、役に立たないかもだけど、一応、わたしも居るし……」

「……そうだな」