こっちはちゃんと話を聞こうと思って黙ったっつーのに。
だからと言って俺が喋っても話が進まなそうなのは事実で。
じゃあどうしろっつーんだと再びため息をつきそうになったところに、
「……僕が言おうか?」
永瑠の後ろから、ソファの背もたれ越しに英璃が苦笑を浮かべてそう言った。
途端に永瑠は首をブンブンと振って断りを示す。
「い、いい!オレ言うから!」
「え、でも姉ちゃんものすごい言えなさそう……」
「う、うっさい!言えるってば!」
「そうかなあ……」
「そうだってば!」
心配そうな英璃に対し、永瑠はかたくなに提案を拒む。
そこまで“言える”とか言い張るならすでに言えててもいいような気がするんだけど。
とか思ってしまう俺に、永瑠がキッと睨むような視線を向けてきた。
いやだからなんで睨むんだっつの。
「え、っと、あのな、」
「ただいま」
「ッ!」
今度こそと言う風に口を開いた永瑠、の言葉を遮ったのは、リビングのドアを開ける音と共に聞こえてきた細い声で。
決意を踏みにじられたように息を呑んだ永瑠は、諦めたようにソファの背もたれに横向きにもたれかかった。
俺は顔を背もたれに押し付けて脱力している永瑠から、決意の声を遮った張本人へと振り向いた。
そこには、静かに微笑んでこちらを見ている女性の姿があって。


