駅に着くと、七瀬は何も言わずに券売機へ向かい、切符を買った。
俺と七瀬が通う、大学がある駅の切符。
俺と七瀬が出会った場所のある、駅の切符。
けれどもう、そこに行っても七瀬には会えない。
会えない、か。
券売機の側で、七瀬が俺を振り返る。
目が合ってから、俺は黙ってそちらへ向かい、入場券を1枚買った。
安い入場券。
でもこれが、七瀬と居れる最後の切符。
最後の繋がり。
そう思うと、なんだかヤケに重たくて。
しっかりと、その切符を握り締めた。
大事に、ぎゅっと。
ホームに向かう。
人は疎らだ。
電車はまだ来ていない。
「……座る?」
レールを見つめていた七瀬に問いかける。
七瀬は俺を見上げて、二度首を振った。
「……ううん、いい。このままで」
「……そか」


