自分の選択と、気持ちと。
2つの間で震える七瀬を胸に。
「……ここに、居るから」
「…………っ」
「ずっと、こうしてるから」
「…………っ」
「離れないから」
「…………っ」
「だから、大丈夫」
「……うん……っ」
喉に詰まったような、上手く出て来ない声で、七瀬はうなずいた。
小さく縦に揺れた、その髪の毛を撫でる。
やわらかな髪の毛の感触が、指の間を通り抜けた。
名残惜しくて、また指を通す。
するり、と。
指から落ちていく髪の毛が、どうしてか酷く、切ない。
だから代わりに、握っていた細い手を、もう一度強く握った。
七瀬が顔を上げる。
涙で濡れた、綺麗な瞳。
その瞳に、俺が映るのはもう、きっと最後だから。
今、言わなければ。
きっともう、言えないから。


