「離れたくない、よお……っ」
「……うん」
「一緒がいいっ……ずっと、一緒に居たい……っ」
「……うん」
「一緒に大学卒業してっ、一緒に住んでっ、一緒になりたかったっ……」
「……うん」
「一緒に子供育ててっ、一緒に成長見守って、一緒に見送って、一緒に歳を取りたかったのっ……」
「……うん」
「でもっ、でも私はっ、夢を選んじゃったのっ……ずっと一緒に居たいのに、でも、夢を選んじゃったっ……」
“ごめんなさい”と、七瀬は言った。
「離れたくないのにっ、私はっ、離れなきゃならない方を選んじゃったよっ……」
「……うん」
「こんな、こんな辛くなるのにっ、こんなに寂しいのにっ、私っ……」
「…………っ」
「私もうっ、有架が居ないと死んじゃうよっ……!」
――思わず。
思わず七瀬を、強く、抱きしめていた。
落ちていきそうなその華奢な手を、ぎゅっと握りしめて。
「……俺はここに居るよ……っ」
気づけばそう、口にしていた。


