冷蔵庫を開けて補充しているらしい水を取り出している英璃に、俺は呆れを隠せない。
小さくため息を吐きつつ永瑠へと視線を戻すと、何故かさっきよりもそわそわしている、気がするんだけど。
「……永瑠」
「は、はい!?」
「さっきからなに?」
「なにって、なに!?」
「言いたいことあるんじゃねェの」
「え、姉ちゃんまだ言ってなかったの?」
何かを言い返そうとしたらしい永瑠、それを遮ったのはキッチンから出てきた英璃で。
なんのことだと眉をしかめる俺から視線を外し、永瑠は更に慌てた様子で英璃へと向く。
「あーもう英璃のバカー!」
「あ、えっと、なんかごめん」
「なんかじゃねェよもう!」
「や、だってほら、もう言ったのかなーって思って……」
「まだだよ今からなんだよ今がんばってたんだよ!」
……なんか理解不能な会話が繰り広げられてんだけど。
説明もなしに“言った”とか“言ってない”なんつー会話をされても困る。
しかもどうやら永瑠がその“何か”を言わなきゃならないのは俺らしいけど、その言われる側の俺が話についていけてない、ので。
「……なんの話?」
とりあえず話を聞かなければどうしようもないので、そう尋ねてみた。
が、今の今まで英璃に“バカバカ”と言いまくっていた永瑠は、ハッとしたように口ごもるわけで。
「え、えーっと、その……」
「なに?」
「あのー……」
「…………」
「だ、黙るなよ!」
ンな無茶苦茶な。


