向かい合って寝転がっていた七瀬の後頭部、それと背中に手を回す。
目を隠して縮こまっていた七瀬を、優しく抱きしめた。
胸板に七瀬の頭が軽くぶつかる。
……あー、これ心臓の音聞こえたらどうしようか。
とか。
「……これでも怖い?」
静かに尋ねる。
七瀬が顔を上げる感覚。
見上げてくるのかと思いきや、そのまま額を俺の胸板にくっつけて首を振った。
「……ううん、怖くない」
「……そりゃよかった」
少し、安心する。
もし“怖い”と言われたら、もっと強く抱きしめたくなっただろうから。
七瀬は顔を覆っていた両手で、俺の服を握った。
さっきよりも、七瀬の額がくっつく。
「……有架だ」
「ん?」
「……有架の匂いだ」
「……うん」
「有架の腕だ」
「うん」
「有架の温度だ」
「うん」
……声がさ、震えてるよ、七瀬。


