「今日何日?」
「え、えーっと、」
「今何時?」
「な、何時って、」
「2×3は?」
「え、えっと、5?」
「明らか足してるよなそれ」
「うっ……」
いくら数学が苦手だとしても掛け算ができないわけじゃない永瑠なので、つまりは相当頭の中は混乱状態らしい。
……まあ、咄嗟に足し算ができたのはすげーと思うけど。
「……マジでどうしたんだよ、今日」
尋ねると、永瑠は一度固まって、口をもごもごさせ始める。
永瑠は言いたいことを我慢したり、言葉に迷った時はよく唇の内側を噛むという癖がある。
今回もそれらしく、口をもごもごさせるだけで一向に開こうとはしない。
なんとなくどんぐり食べてるリスを連想させるその様子を黙って見ているしかない俺の耳に、その時リビングのドアが開く音が届いた。
永瑠の親御さんが帰ってきたのかとドアの方へ顔を向けると、
「騒がしいと思ったらやっぱり来てたんだ」
リビングに入ってきていたのは英璃だった。
「あー、悪い。勉強の邪魔した?」
「ううん?寝てたし」
おいこら。


