同時に顔を見合わせて、笑った。
おかしかったのだ。
本当に。
こんな時に、こんな終わりの近づく時に。
お互いの始まりを聞くなんて、と。
うれしいような、悲しいような。
そんなおかしな気分だったから、笑った。
「……なんか面白いなあ」
「……うん」
ひとしきり笑った後、七瀬は何気なくという風に月を眺めた。
月の形は、相変わらず不格好。
「もしかしたら、結構知らないこと多いのかもねー」
「……だな」
好きになった理由。
それは、隠していたわけじゃない。
ただ、話す必要がないと思っていただけ。
傍に居ることが当たり前になっていたから。
その“当たり前”が崩れる時、初めて言葉の大切さを知る。
言わなかったから、言葉にしなかったから。
だから、知らないままだった。
……それって結構、寂しいことなのかもしれない。


