「その時だ」
「なにが?」
「七瀬のこと好きになったの」
自分でも気が付かないほど。
いや、もうずっと好きだから、それに隠れて見えなくなっただけかもしれない。
それくらい、小さく芽生えた気持ちだった。
何も言わない七瀬を見る。
七瀬は目を丸くして俺を見ていた。
「……え、じゃあ、同時?」
「……かもな」
「私と同じ瞬間に、恋に落ちました?」
「うん」
素直にうなずいてみせると、七瀬はニーッと頬を持ち上げた。
そうかと思えば、
「なにそれすごいー!」
思い切り、もう誰が見ても“うれしそう”というのがわかるほどの笑顔でそう叫んだ。
「すごいすごい!そんなことがあるんだねー!」
「ビックリだな」
「ずっとね、わかんなかったの!なんで有架は私のこと好きになってくれたんだろうって!」
「俺も気になってたけどね。なんで七瀬は俺なんかを好きになってくれたんだろーってさ」


