ロリーポップが不機嫌なワケ。





『……ありがとう!』


そう言って、思い切り、心の底から、笑った。

俺はその時、自分がまさか“これ好き”とか口走ってるなんて気づいてなくて。

だから、なんでそんなうれしそうに笑うんだって気になったんだけど。


「……その笑顔見た瞬間、“あ、これだ”って、思ったんだよな」

「…………っ」

「こうやって、誰かが心から笑う瞬間を、自分が作れたらって思った」

「…………」

「同時に思い出したのが高校ン時で。そう言や高校の文化祭ン時に、そんな笑顔たくさん見たなーってさ」

「……あ、もしかして」

「文化祭ン時、俺バンドやったの」

「だからサークル、軽音系に入ったんだ!」

「ビンゴ」


今の説明とも言えない説明で、すべてに気付いた七瀬はマジですごい。

心から笑えた瞬間があったその時、俺がやってたのはバンドだった。

いろんな人が思いっきり笑ってくれたその時、俺がやってたのは音楽だった。

だからそれを選んだ。

例えそれが叶わなかったとしても、たぶん後悔はしない。

目指すものがあるってことだけで、支えになる。

そしてそれを見つけ出してくれたのが、七瀬で。

……あ、大事なこと、忘れてた。


「……どこまで鈍いんだ俺」

「え?」