本当に不思議だと思った。
すべての出会いが、不思議だと思えた。
俺がここに生まれなかったら、永瑠には出会わなかったはずで。
俺があの高校に行かなかったら、袮夏には出会わなかったはずで。
そして。
「……俺があの大学入って、早々辞めようかって中庭で悩んでなかったら、七瀬には出会わなかったわけだ」
サイダーを一口、喉に通す。
ペットボトルを七瀬に差し出すと、七瀬は少し驚いた様子で俺を見上げていた。
「……有架、大学辞めようって思ってたの?」
「そう。思ってた」
「……私、知らなかったよ」
「まあ、話したことなかったし」
七瀬は少なからず、落ち込んだ声色でペットボトルを手に取った。
それを確認してから、今度は俺が街並みを見下ろした。
2年ほど、帰ってこなかった街。
2年前、とても帰りたくなった場所。
「……辞めようとか思ったのは、単純な理由なんだけど」
「……うん」
「何したらいいかわかんなかった」
「…………」
「それだけ」


