『これ好き』
そんな4文字。
そんな、たった4文字のセリフを、七瀬はとてもうれしそうに口にした。
「私ね、“上手いね”とか“すごいね”みたいな言葉より、“好き”って言われるのが一番うれしいんだよね」
「……そっか」
「うん。でもね、なんかね、有架が言ってくれた“好き”はなんとなく他の人と違う気がしたの。“純粋にそう思った”って感覚が、なんでかわかんないけど、伝わってきたっていうか……」
どう表現したらいいのかわからないらしい七瀬は、そこで一度言葉を切る。
それから少し考えて、思い切ったようにバッと頭を持ち上げた。
「わかんないんだけど、でもわかるの!有架の言ってくれた“好き”は、私にとってすごく大切だったの!だからあの絵のデザインに決めたの!」
「…………っ」
「だから、私は有架が好きになったの」
「……そ、か」
「うん」
「名前も知らなかったのに?」
「そうですよ?名前も知らないキミが、私の描いた絵に、私にとって大切な“好き”をくれた瞬間、私はキミに恋をしたのです」
少しだけ、照れ臭そうに。
目を細めて微笑んだ七瀬が、とても、好きで。


