「サイダーも美味しいデスよ」
「きゃー!サイダー!有架ってば男前ーっ!」
「そりゃどうも」
サイダー1本でここまで機嫌が直るのか。
たぶんなんでもいいから美味しいモン飲みたかったんだろう。
飛び起きてサイダーを受け取った七瀬は、ペットボトルを見て、次に俺を見上げた。
「……2本あるの?」
「…………。気にすんな」
「ないんだね、1本しかないんだね」
「いや別に俺は飲まなくてもいいけど」
「なんでも1人で食べたり飲んだりすると、美味しさ半減なのー」
「…………」
「ってことで、一緒に飲みましょー」
“ね?”と首をかたむけて、その横でサイダーを軽く振ってみせる七瀬。
……しょーがねェな。
とか言ってみる。
「……わかった」
「うん!」
ニコッと笑ってうなずいた七瀬は、何を思ったかソファから立ち上がる。
それからベランダの方へと足を向けると、鍵を開けてガラス戸を開け放った。
涼しい夏の夜風が、リビングに音もなく流れ込んでくる。


