「絶対一直線だよ!寄り道したらダメだよ!おやつは300円までだよ!」
「遠足か」
しかも“寄り道したらダメ”って、帰りに言うことじゃねェか。
“おやつは300円までだよ”ってそれ遠足前のセリフじゃねェか。
まあ、今寄り道したら床掃除が大変になるのは理解できるので、言われた通り風呂場に一直線だけど。
「あ、そうだ!着替え用意するから、洋服漁っちゃうけどいい?いいよね?」
「あー、別に……」
「わはー!コーデどんなのがいいかなー!有架結構服持ってるよねー!男子の服とかコーディネートしたことないんだよねー!どうしよっかなー!」
聞いちゃいねェ。
しかもなんかテンション高くなってやがる。
どんな服を持ってくるかわかんないけど、まあ七瀬はセンスいいから心配はいらないと思う。
足取り軽く俺の部屋に向かう七瀬を見届けてから、風呂場のドアを開けた。
ふと気になって、なんとなく自分の服を嗅いでみる。
……あー、うん、こりゃ臭うわ。
*****
七瀬の持ってきた服(センスパネェ)を着て風呂場から出る。
リビングのドアを開けると、ソファに腰かけて雑誌を読んでいた七瀬がパッとこちらを向いて立ち上がった。
そして小走りに駆け寄ってきたかと思うと目の前で立ち止まり、身を乗り出すようにして俺の胸板に鼻先をくっつけてきた。
なにごと。


