しかし七瀬は膨れっ面のまま、何故かずっと玄関に立ちはだかっている。
なんでそこにずっと立っていなければならないのか。
俺上がれなくね?的な。
七瀬は相変わらずの表情で、右手の人差し指を伸ばすと、自分の後ろの方を指し示した。
その方向は、どういうわけか風呂場。
「もういいもん。だからとりあえずシャワー浴びてきて」
「は?」
「あ、着替えは持って行ってあげるから。お風呂場に一直線でよろしくね」
「なんで」
「…………。オーケー、有架クン。一度自分の姿を見てみればいいと思うよ!」
膨れっ面だったのがパッと笑顔になる。
恐ろしいくらいのニッコリ笑顔。
なので言われた通りに自分の姿を見下ろしてみる。
……あぁ、なるほど。
「……忘れてたわ」
「ありえないー!この人ありえないよー!川に入ってびしょ濡れなの忘れてたよー!ちなみに川に入ったってわかったのは川のニオイがするからだよー!」
「うん、ごめん。だからなんだ、とりあえず落ち着け」
誰に叫んでいるのか不明だけど、口に手を添えて大声を上げる七瀬。
大変近所迷惑なのでやめてほしい。
そんな七瀬を宥めながら、靴を脱いで玄関マットの上に上がる。
七瀬は焦ったように風呂場を一心に指さす。


