「あ、おかえりなさいアナタ!ごはんにする?お風呂にする?それとも……わ・た・り・が・に?(キュルン)」
「お邪魔しました」
「七瀬さん渾身のボケにツッコミすらしてくれなかったなんて……」
実家のドアを開けた途端に、先に戻っていた七瀬の意味不明なボケに思わずドアを閉めようとしてしまったのはしかたないと思ってほしい。
っつーかなにゆえワタリガニ。
そこに意味はあるのか。
「ひどいひどい!どんなツッコミがくるかなーって楽しみだったのに!わくわくのどっきどきで玄関待機してたのに!このバカリカ!」
「なんでお前にまでその呼び名が浸透してるんだろうね」
「英璃くんが使ってたから“あ、これ使わせてもらおう!”と思って勝手に呼び名いただいてきちゃった!」
「返してきなさい」
「ひどーい。永瑠ちゃんとか袮夏くんにはちゃんとノリツッコミするのにー。なんで私の時はダメなのー。キャベツはいけないんだからねー」
一応説明、“キャベツ”というのは“差別”のことらしい。
まあそれは置いておくとして。
「場合によるだろ、場合に」
「じゃあ今絶好のノリツッコミ場面だったじゃん!じゃんじゃん!」
「ドア開けた瞬間に想定外のボケがきてどう乗れと」
「甘い!それじゃ芸人の世界は生きていけないんだからね!」
「そのつもりはないのでご安心を」
そう手刀を切ると、七瀬はぶーぶーと膨れっ面で唸った。
ボケられた瞬間に黙ることなく“お邪魔しました”とドアを閉めようとする行動に出た俺は褒められていいんじゃないかって思うんだけど。


