何がどう大丈夫なのかと英璃が、もしくは俺が尋ねようとする前に、母さんが口を開く。
「今日は、おばちゃんとおじちゃんが、そっちの家に泊まるから!」
「……はい?」
自由すぎるウチの母親に、英璃はきょとんとしている。
そりゃそうだ。
俺でさえ自分の母親の発言についていけていないのだから。
「……いつの間にそんな話になってんの」
「あら、だって英璃くん1人にしちゃうなんて心配なんだもの!大丈夫、未花子ちゃんからお許しはもらってるから!」
“キラーン”という効果音がとってもお似合いな感じでウインクするウチの母親、ホントありえない。
そんな“ありえない”と実の息子に思われてしまうウチの母親は、英璃を回れ右させて部屋へ行くように促す。
戸惑いながらも部屋へ戻っていく英璃の背を見つめる母さんに、俺はため息交じりに、
「……つか、なんで2人して泊まりに行くの」
と、問いかける。
すると、母さんはこちらを向いて、微かに笑った。
「七瀬ちゃんと、しっかり話しなさいね」
「…………っ」
穏やかな口調でそれだけ言って、母さんは何も言えないでいる俺に背を向ける。
その後ろ姿が偉大に思えた。
……こういう時だけ空気読むのマジやめろ。
もう一度ため息を吐き、俺は誰も居なくなったその場を後にした。


