未花子さんとその旦那さん、そして永瑠が乗った車を見送った時には、空はもう群青色に染まっていた。

まだ精神は完全じゃないからと、未花子さんは病院へ行くことになったのだ。

永瑠も少し話を聞いてもらうことにしたらしい。

いろいろと抱え込んできて疲れ切った心を、ちょっと休ませてくる、ということみたいだ。

ゆっくり休んで、そして笑顔で帰ってきてほしいと思う。

……さて、そうなってくると、問題は、


「……僕、1人じゃん……」


1人残ることになった英璃である。

青い顔をして車の消えて行った道を見つめている。

いやいや。


「お前料理できるだろ」

「できるけど問題はそこじゃないんだよ」


どこだよ。

と聞こうとした俺に、英璃は“クワッ!”と。


「1人って怖くない!?」


そこか。

あれ、英璃ってビビリだったっけと記憶を辿ろうとしたまさにその時、


「大丈夫よ、英璃くん!」


とか言いながら、何故かウチの母親が笑顔で英璃の肩を叩いた。