そんな永瑠を抱きしめる、未花子さんも泣いていた。
その涙が、償いのものなのか、それとも、永瑠が帰ってきたことに対する喜びのものなのか。
答えは、すぐに見つかった。
聞こえたのだ。
涙に交じった、その言葉が。
愛にあふれた、母親の、声が。
「……おかえり、永瑠っ……」
“おかえり”
その言葉が、なんでもないような、当たり前の言葉が。
とてもぬくもりに満ちたものなのだと、この瞬間に感じた。
自分には、帰る場所があるんだ。
そう、実感させてくれる、唯一の言葉。
ただひとつの、言葉。
「おかえり、姉ちゃん」と、英璃が云う。
「おかえり、永瑠」と、父親が云う。
「おかえり、永瑠ちゃん」と、俺の両親が云う。
「永瑠ちゃん、おかえり」と、七瀬が云う。
永瑠はゆっくりと、顔を上げる。
涙も拭かずに、笑う。
心の底から、笑う。
そして云った。
「……ただいまっ!」


