ロリーポップが不機嫌なワケ。





見間違えるはずがない。

絶対に。

例え実瑠のフリをしていたとしても。

俺は絶対に、間違えない。

川の中で1人、小さく震えているアイツは――……


「――永瑠っ!」


……――バシャッ

跳ねる水の音が、鼓膜を揺らした。

気が付けば俺は川の中に入っていて。

実瑠の溺れた、中央の一番深いその手前で震えていた、永瑠の細い腕を掴んでいた。

その腕は冷たかった。

けれどそれは、呼吸をしている冷たさだった。

生きている、冷たさだった。


「……永瑠っ」


名前を呼ぶ。

呼ぶのに、返事がない。

代わりに永瑠は、首を横に振る否定の意思を示す。


「……違う」

「違わない」

「違うッ!」


荒々しく、腕を掴んでいた手が振り払われる。

同時にこちらを向いた永瑠の瞳は、泣くに泣けない、そんな息苦しい色をしていた。