もしも。

もしも、永瑠たちが、このすべての秘密を、最初から話してくれていたなら。

俺は、どうしていただろうか。

あの、お隣の家族を変な目で見ただろうか。

幼なじみ2人と、一生顔も合わせなかっただろうか。

……永瑠を、実瑠として、見ただろうか。

なんて。

バカじゃねェの。

ありえねェ。

お隣の家族は俺の第二の家族で、幼なじみ2人は俺の大事なヤツ等で。

そして永瑠は、永瑠なんだよ。

どうやっても、どう転んでも。

永瑠は、永瑠でしかねェんだよ。


だから走った。

走って、走り回って、永瑠を探した。

永瑠の行きそうな場所を、すべて探し回った。

真夏日の、炎天下。

昼を過ぎ、午後の太陽は更に気温を上げていく。

水分補給もなしに、30度超えの温度の中を走るなんて自殺行為だ。

けど走った。

髪の毛や服が汗で肌にくっつき、熱気が纏わりついてくる。

それでも走った。

それよりも何よりも、助けたい、大事なものがある。


「……永瑠っ、死ぬなよっ……」


唯一無二の、大事なものが。