無意識に口角が持ち上がる。
それを正すことなく、笑いながら、俺は強気な目でこちらを睨んでくる英璃の頭に、手を乗せた。
ぐしゃぐしゃと撫でる。
「……お前カッコいいな」
「……そ、そうだろっ」
「あぁ。ったく、なんで俺の周りに居るヤツ等はこんなくそかっこいいヤツばっかなんだよふざけんな」
「有架兄ちゃんはカッコいいよっ!」
唐突すぎる英璃のセリフに、俺は「は?」と手を止める。
すると、英璃は自分の頭に乗ったその手を右手で取り、握手するように握った。
そして俺を見上げて言う。
「有架兄ちゃんはカッコいいんだよ!マジだよ!クソカッコイイよ!あの日からヒーローなんだよ!僕の憧れなんだよっ!」
「…………っ」
「だから姉ちゃん助けてよ!死なせるなよ!約束だからな!約束破ったら一生“バカリカ”って呼んでやんよっ!」
「……ははっ」
握っていた手を離し、拳を作って突き出して、一生懸命そう言う英璃に、俺は思わず笑った。
俺がヒーローで、憧れか。
まったく逆な人間だっつーのにさ。
でも、しかたない。
大切な弟分がそう言ってんだ、ヒーローにならず、なんになる。
そうだろ?
だから俺は、英璃の右拳に、自分の拳をぶつけた。
「……あぁ、約束。永瑠は絶対、死なせねェ」