ロリーポップが不機嫌なワケ。





言葉の意味がわからない。

入れ替わってる?

実瑠と……永瑠が?

瞬きすら忘れた俺に、英璃は続ける。


「実瑠兄ちゃんが死んでから、双子の姉ちゃんに、お母さんは実瑠兄ちゃんを映して見るようになったんだよ」

「…………」

「お母さんが、姉ちゃんを呼ぶとき、なんて呼んでる?」

「……“るーちゃん”」

「そうだよ。でもそれ、実瑠兄ちゃんを呼ぶときの、お母さんの癖なんだよ」

「…………っ」

「姉ちゃんを呼ぶときは、“なっちゃん”って呼ぶんだ。でも、あの頃から、姉ちゃんのことそう呼ばなくなった」

「…………」

「一回、姉ちゃんが、“わたしは永瑠だよ”って言ったことがあるんだ」

「……うん」

「そしたら、お母さん、なんて言ったと思う?」

「…………」


「“いい?実瑠。永瑠ちゃんはお空に行っちゃったのよ”って、言ったんだ」



――体温が、消えた。

手が、冷たくなった。

冷凍庫の中に詰め込まれた気分だ。

唐突に、息をしていない実瑠の冷たさが蘇った。

氷でもない、雪でもない、なんとも言えない、あの、冷たさ。

人が死んだときの、あの、心臓の止まるような、冷たさ。