学科が違うから何もできないってこともないけど、七瀬がかたくなに断ってきたので、俺も引き下がったわけなのだ。
気になるとこだけど、深く追求しないでおこうと思う。
「ま、俺にデザインの才能なんてないし」
『え、そんなことないよ?ホラ、この間、私が課題頑張ってる隣で落書きしてた異星人とか』
「なんで持ってんの」
『この魚なのか猫なのかわかんないヤツに棒人間の体がくっついてるところとかすっごく斬新だと思うんだよね』
「捨てろ。一刻も早く」
“ってかバカにしてんだろ”と俺が言うと、“バレた?”とか言って笑いやがった。
あの野郎。
まあでも、携帯越しにでも七瀬の笑顔が浮かぶくらい、楽しそうに笑ってるから、別にいいか。
「じゃ、その異星人を眺めつつ頑張れよ」
『そうするつもりだよー。笑いすぎて作業できないかもしんないけど!』
「その作業が終わったら教えろよ」
『ん?なんで?』
俺は携帯を持ち変えつつ。
「一回こっち来いよ。迎え行くから」
曖昧と言えば、曖昧な言葉。
けれど、七瀬はわかってくれたようで、スピーカーから息を呑むような沈黙が届いた。
しばらくしてから、小さな笑い声が聞こえてきた。