まさか、と疑う。
しかし、英璃はしっかりと、首を縦に振った。
「そうだよ」
「……なんで」
「……有架兄ちゃん、さ」
英璃は少し間を置き、小さな声で、訊く。
「……実瑠兄ちゃんが死んだ時のこと、覚えてる?」
「……みのる……」
覚えている。
とてもよく覚えている。
――夏だった。
そうだ、あれは夏だった。
こんな風に暑くて、濃い色をした空に、積乱雲が絵画のように浮いていた季節だった。
俺は中3くらいで、双子の永瑠と実瑠が小3、英璃が小1ってとこか。
俺が受験で一緒に遊んでやれなかった時だ。
だから3人だけで川に遊びに行ったんだと聞いた。
未花子さんが居れば絶対に止めただろう。
でも、その時、未花子さんも旦那さんも仕事だったらしい。
小学生なんて遊び盛りだ。
夏だから、3人で川に行こう、なんてことくらい考えつくし、考え付いたら遊びに行かなければ気が済まないはずだ。
でも、ここまでは考え付かなかったんだろう。
――川で溺れて、死んでしまうかもしれない、なんて。


