異様な光景。
カーテンは閉め切られたまま、電気すらついていないリビング。
同じ画を写した写真とガラスが散乱し、その中で泣き喚く未花子さん。
とても、異様な光景だと思った。
それに少なからず、怯えている自分を否定できないでいた。
「……何があった?」
静かに問う。
それに答えたのは、七瀬ではなく、
「……わ、私が、私が悪いんですっ」
うずくまったままの、未花子さんだった。
涙声で、床に額をこすりつけるようにして、続ける。
「私が、わたしが、ワタシガ、全部全部ぜんぶゼンブ悪いの、悪いんです、私のせいなんです、ごめんなさいごめんなさいゴメンナサイごめんなさっ……」
「未花子さん、大丈夫ですよ。大丈夫、大丈夫」
何度も“ごめんなさい”と、何かに憑りつかれたかのように繰り返す未花子さんに、七瀬が和やかな声色で“大丈夫”と言い聞かせる。
……これは、一体、どういう……。
状況が理解できず、呆然と立ち尽くす俺に、いつの間にそこに居たのか、
「……お母さん、精神病、なんだ」
後ろから、英璃のそんな言葉が聞こえた。
俺は振り返る。
英璃を見る。
そして復唱する。
「……精神、病……?」


