ロリーポップが不機嫌なワケ。





正確には、ガラスの破片でできた、海。

海の中には、見覚えのある同じ写真が、いくつも散らばっていた。

その中に、うずくまるようにして泣き声を上げている、未花子さん。

傍らに、それを宥めるようにして「大丈夫ですよ」と優しく声をかけている、七瀬。


「……七瀬」


未花子さんの背中を、まるで子供をあやすようにしてとん、とんと叩く七瀬に、声をかけた。

すると、七瀬はゆっくりと顔を上げ、俺を認めると瞬きした。


「……有架」


驚いたように俺の名を呼ぶ。

そして微かに笑った。


「……すごい、汗だくだよ」

「……そりゃ走ってきたから」

「弟くんが探しにきてくれたでしょ」

「あぁ」

「……ガラスで怪我してない?大丈夫?」

「大丈夫。英璃が教えてくれたから」

「そっか」

「七瀬と未花子さんは?」

「うん、怪我してないよ」


うなずいて、七瀬は再び未花子さんの背を、規則正しいリズムで優しく叩く。

未花子さんは何も言わない。

ただ泣いているということだけわかる。

うずくまっているから顔すら見えない。