真夏の太陽は容赦ない。

午前中だろうがなんだろうが、ジリジリとアスファルトを焼く。

向こうの方にカゲロウらしきものがゆらゆらとしているのもうなずける。

ちょっとは自重しろよ太陽。

これだから夏に出歩くのは億劫だ。

俺は建物で出来上がった日陰の下を歩きながら、なんとなく空を見上げる。

濃い色をした、真夏の空だ。

……さて、どうするかな。

とか、おぼろげにこれからのことを思考し始めた俺の耳に、その時。


「あーっ!居た!発見した!」


前方から、聞き覚えのある声が響いてきた。

反射的に、空に向けていた顔を声の方へと向ける。

声を聞いただけで誰かはわかってたけど、なんでコイツがこんなところに。

ヤツは立ち止まることをせずに、逆に驚いて立ち止まってしまった俺に駆け寄ってくる。

駆け寄ってきて、ワンクッションもなしに突進してくると、俺の服をガッシと掴んで引っ張った。

太陽も容赦ないけど、コイツも容赦ない。


「……どうしたんだよ、英璃」


猛突進してきたそいつ、英璃を見下ろして、とりあえず落ち着けと頭に手を乗せつつ尋ねてみる。

その頭はめちゃくちゃ熱い。

けれど、英璃はそんなことまったく気にしていないらしく、キッと俺を見上げて言う。


「どこ行ってたんだよバカリカっ!」