小さくうなずくと、袮夏は雑誌を閉じてその表紙を弾く。
「そんな疲れること1日に何回もせんでええねん」
「……そっか」
「せや。今日あった嫌なことは、今日振り返ったらあかんわ」
「…………」
「同じ答えしか出ぇへんし」
「…………」
「それより、明日どないしよーとか考えた方がお得やねんな?」
「思わへん?」と、袮夏はニッと笑って、俺を見た。
俺も袮夏を見返した。
……あぁ、なるほど。
だからコイツ、いっつもバカみてェに、楽しそうに、笑ってんのか。
ふざけたほどに、前見てるってか。
とか思い始めたら、なんか意味不明な笑いが込み上げてきた。
「……あー、バカみてェ」
笑いながら言うと、ヤツはやっぱいつもみてェにバカ面で。
「せやろ。バカはお得やで」
「ちょっとは悩めよ」
「悩む時間がもったいないねん。それより楽しいことやりたいわ」
「バカだ」
「バカやで」
「俺もか」
「お前もや」
おかしなほどに、笑えた。


