「…………」
「…………」
「…………」
「……聞かないんだ」
「……なんを?」
「俺が泣いた理由」
ずっと理由を尋ねてこない袮夏。
フツー聞くんじゃないかと思うんだけど、それは俺の偏見だろうか。
目の上に乗せた腕が少しダルさを覚える。
袮夏が読んでいるであろう漫画か雑誌のページを捲る音はそのまま。
「理由、聞いてどないするん」
ペラッとページを捲る音にかぶさって、袮夏の当然といいたそうな調子の声がそう言う。
俺は腕を額へとずらし、目線を袮夏へと向けた。
ヤツが読んでいるのはゲーム雑誌だった。
「……フツー、聞くかと思って」
「まあ、せやなあ。フツー聞くやろなー」
笑いながら言って、袮夏はページを捲る。
「けど、あれやん。理由聞いても、変わらへんやろ」
「…………」
「また泣きたくなるだけやろ」
「…………」
「もう泣くん疲れたやろ、有架」
「……うん」


