「……悪ィんだけど、ちょっと泊めてくんない?」
『あ?……あーまあ別に構わへんけど、今日ウチ誰も居らへんからロクなモン出て来んで?』
「その辺は気にしてない。っつーか期待もしてない」
『失敬な!……まあしゃーないか。前からウチカップ麺主食やから』
「おばさんそろそろ料理覚えたらどうなの」
『代わりに親父が頑張っとるわー』
とかなんとか、ヤツは1人で爆笑する、のち。
『んじゃー、鍵開けるわー』
「よろしく」
窓を閉める音に合わせて通話を切る。
ポケットに閉じた携帯を入れ、そのままポケットの縁に指を引っかけた。
もう空は真っ暗で、星が見えるのかもしれない。
顔を上げる気にはならなかったから、わからなかったけど。
しばらくアスファルトを見下ろしていると、小さな階段の先にあるドアの鍵がガチャリと音を立てて開いた。
ドアノブが回り、ドアが開く。
現れた悪友は、いつもと変わらないバカ面で。
なんか少しうらやましく思って、小さな階段を踏みしめるように上がり。
ドアノブを支えたまま、右手を軽く持ち上げたヤツの目の前で足を止め、
「よー、有架。っちゅーか、いきなり泊まりにくるとかどないしてっ……」
俺よりも少し背の高い袮夏の肩に、うなだれるように額を載せた。


