どうしていつも、気がつけないのか。
誰かの変化に、誰かが何かを抱えていることに。
どうして俺はいつも、気が付けないのか。
……あぁ、違う、気が付きたくないだけなのか。
そんなに面倒くさいか、何かに関わることが。
……そこまで最低だったのか、俺は。
「……知らなかった」
奥歯を噛み締めるようにして発した声は、自分でも驚くほどに掠れていて。
七瀬は、俺の服を掴む手に、きゅっと力を込めた。
「知らなくて当然だよ。だって言ってなかったから」
「……気づきもしなかった」
「いいの。気づいてほしくなかったから」
「……なんで1人で決めんだよ」
「私の問題だと思ったの。相談しなかったのは、本当に、ごめんなさい」
謝られてばかりの日だな、とぐちゃぐちゃになった思考でなんとなく思った。
謝らなきゃいけないのは、俺の方じゃねェかよ。
全部俺が悪いのに、なんでこうも、周りはこんなにも、俺を庇おうとするのか。
そんな資格、俺にはない。
それなのに、
「……有架、そんなに、自分を責めなくていいから」
七瀬はとても、優しい声色でそう言う。
